東京地方裁判所 平成9年(モ)5783号 決定 1999年4月19日
申立人(被告) Y1
同 Y2
右両名訴訟代理人弁護士 椎名麻紗枝
相手方(原告補助参加人) 株式会社東京三菱銀行
右代表者代表取締役 A
右訴訟代理人弁護士 溝呂木商太郎
主文
本件申立てを却下する。
理由
一 申立ての趣旨及び理由
申立人らは、相手方に対し別紙文書目録記載の文書(以下「本件文書」という。)の提出を命ずる旨の決定を求め、申立ての理由として、本件文書には、融資にかかる貸付金の使途や金利、元本の返済方法等が記載され、申立人らと相手方との間の法律関係を根拠づける事実の記載があるから法律関係文書(平成八年法律第一〇九号による改正前の民事訴訟法(以下「旧法」という。)三一二条三号後段)に該当すると述べた。
二 当裁判所の判断
銀行における貸出稟議書は、当該融資について決裁権者の決裁承認を得るために作成されるものであって、専ら銀行内部における意思決定のためのものであり、融資の相手方を含む外部に公開を予定していないものであることは明らかである。また、銀行にその作成を義務づける法令も存しない。
したがって、本件文書は、民事訴訟法二二〇条三号後段(旧法三一二条三号後段)の「挙証者(申立人ら)と文書の所持者(相手方)との間の法律関係について作成された」ものには当たらない。
また、申立人らは、当裁判所の釈明にもかかわらず、本件申立てにつき現行民事訴訟法に基づく主張をしないが、右のような貸出稟議書の性質に照らせば、本件文書は、民事訴訟法二二〇条四号ハの、「専ら文書の所持者(相手方)の利用に供するための文書」に該当するというべきである。
よって、本件申立ては、理由がないから、主文のとおり決定する。
(裁判官 鈴木健太)
<以下省略>